2004年05月22日

神林長平『膚の下』読了

膚の下
[Amazon] [bk1]

慧滋は啓示。

毎日の通勤電車で少しづつ読み進めて、
だんだんと終わりが近付いていくのが惜しくなって、
「今日の帰りの電車で終わるな」と思って、
そのとおりになった。

本を閉じて、目を閉じる。
じんわりと何かがこみあげてくる。
いかん。どうも涙腺が弱くなっていかん。
ずっと神林長平を読んできてよかったなぁとしみじみ思った。
「ようやくここまでたどりついた」といったフレーズが何度も
出てきたけど、本当にそんな気分だ。
高校生になるころに彼に出会い、
十代のウチに『七胴落とし』を読むことができた。
ほぼリアルタイムに彼の新作に触れることが出来て、
こうして『膚の下』を読み終えることができた。
なんというすばらしいことだろう。

先日、この『膚の下』に表紙を合わせた『あなたの魂に安らぎあれ』を
買った(『帝王の殻』はみつからない。家には単行本があるから、
それほど心配はしていない)。

神林長平『あなたの魂に安らぎあれ』[Amazon] [bk1.jp]
(なぜか bk1 にはデータがない。また、表紙は前の版のまま)

調べてみると、当時、単行本が出たのが1983年。
21年ぶりに読み返す、ということになる。
あのくそったれな十代の自分は、
「神林長平が長編を書き下ろす」というニュースに心躍らせ、
手に入れた日には夢中になって読み進めた。
読み終えたときに、なにかスゴイ体験をしたような気分になって、
以来、寄せ書きに添えるメッセージは「あなたの魂に安らぎあれ」だった。
何も知らない人には、宗教じみて見えたかもしれない。
実際、信仰の問題だと言ってもいいから、
そのとおりなのだろう。
posted by 多村えーてる at 12:54| 奈良 ☔| Comment(1) | TrackBack(3) | BOOKS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
私も「膚の下」を読んで、ああ良い話だなあ、としみじみ思いました。
多村さんの書評が、私が読み終わったときの気持ちに良く似ていたのでうれしくなりました。
昔から神林さんの本が大好きで、雪風や敵は海賊など好きな作品は多々あるのですが、どうも「膚の下」がナンバーワンになりそうです。
Posted by JLR at 2005年03月30日 13:34
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