2004年02月09日

神林長平『天国にそっくりな星』がハヤカワ文庫に

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神林長平『天国にそっくりな星』

光文社文庫用に書き下ろされた当時の作品群は、出版社が違うからなのか何なのかわからないが、ハヤカワの神林作品とはあきらかに毛色が違っていて、けして上出来とは言えない、神林ファンとしても首を傾げたくなるような作品がほとんどだった。それも今となってはすべてハヤカワ文庫に収録されてしまい、おしなべて神林作品という括りになってしまった。新しいファンは清濁あわせのむの気持ちで全作品を読むことになるね。長らく再版されていない作品も、そろそろ再版してほしいところ。

で、そんな珍妙な光文社文庫の神林作品の中でも、『天国にそっくりな星』はわりと気に入っていた作品。いつもどおりの、神林ワールドが展開していく中で、ひときわ飄々としていた主人公は、ちょうど『帝王の殻』とかかったるい作品が続いていた中で、絶妙のカウンターだったのだ。

それにしても、神林長平をセカイ系なる珍奇なジャンルに分類するのはあまりにも不粋だねぇ。「迷惑一番」や「ルナティカン」でわざわざ深井零にからめたキャプションを入れたりしていたけど、そうまで姑息になる必要があるのか二十一世紀。
posted by 多村えーてる at 19:16| 奈良 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | BOOKS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

さべあのま『はにほへといろは』

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さべあのま『はにほへといろは』

表題作をのぞいたら、こっちのほうがよっぽど『地球の午后三時』な作品集ですな(笑) 表題作が日本人の主婦が主人公だったので、こちらの作品集には日本が舞台の作品を集めたということらしい。いわゆる「等身大の女の子」がそれぞれの世代と時代に乗っかって描かれているわけだけど、今にして思うと、少しずつそういったものにシフトしていく過程で、「男の子」だったぼくは少しずつ「さべあ作品」から遠ざかっていったのかもしれない。さべあのまは、「等身大の女の子の気持ちをリアルに描いた漫画家」という評価のほうが高いのかもしれないけれど、ぼくにとってはやっぱり叙情漫画家さべあのまで、女の子の気持ちが描かれるのも、キャンパスライフが描かれるのも、そういった叙情的なモノからこぼれ落ちた何かだと受け止めていたのだろう。だから『3番目の季節』のラストページの「カメラが引いていくところ」にビンビンきていたのだと思う。

次の「さべあのま全集・第4巻」は『ネバーランド物語』。その次が『マービーとギジェット』かぁ。しばらくはそっち系の作品集が続くのね。『ネバーランド物語』も『ギジェット』も、単行本買った記憶があるんだけど、以前、いろいろと整理したときに手放しちゃったみたい。そのときの自分は、「俺にとってのさべあは『ライトブルーペイジ』と『地球の午后三時』があればそれでよい。さよなら、モト子せんせい!」とかなんとか、硬派なつもりだったんだろうな。

本人のサイトをのぞいてみたら、新作を描いているとの情報が。ほほう。
posted by 多村えーてる at 12:59| 奈良 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | BOOKS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする