月刊ガンダムエース2007年2月号
(略)間もなく発表されるそれは、ラプラス憲章と呼ばれ、人と世界の新たな契約の箱として機能することになるでしょう。首相の演説に「契約の箱」というセリフがあったことを記憶しておこう。
地球連邦政府の総意のもと、そこに神の名はありません。人類の現在についても言及されていません。これから先、もし最後の審判が訪れるとしたら、それは我々自身の心が招き寄せた破局となるでしょう。すべては我々が決めることなのです。(地球連邦政府首相リカルド・マーセナスの演説より)
「メラニーが実務を離れてから、あの会社も腑抜けた。」(サイアム)メラニー・ヒュー・カーバインが「実務を離れた」のは、会長職を引退したあと、という解釈でいいと思うのだけれど、何年に引退したか、という設定はどこかにあるのだろうか。『アナハイムジャーナル』にその記述はあっただろうか。
赦すと言うか、このわたしを。ビスト一族に課せられた百年の沈黙を守るために、我が子さえ手にかけた鬼畜を。U.C.0001から、一足飛びにU.C.0096まで進んでしまうけれど、過去にサイアムは自分の息子(カーディアスの父親)を殺害した過去がある……何らかのいさかいがあったらしい。このことはサイアムとカーディアスの関係をいずれ壊していくのだろうか。それとも、カーディアスの言葉(「わたし以外、誰があなたを赦せるというのです?」)は額面どおりのものだろうか。
いつだって福井晴敏氏の小説はこってりしたバックボーン描写から始まるんだ。
宇宙世紀の始まる瞬間からの描写は、いまだ宇宙世紀年表でしか目にしたことのなかった情景だ。まさかその歴史的瞬間に、首相官邸爆破という大きな事件があったとは、宇宙世紀年表のすき間にしては大きな花火を打ち上げたものだと思う。
もともと、宇宙世紀100年にわたり秘匿されてきた謎「ラプラスの箱」などという大ネタからして、ガンダム世界そのものの立脚点を覆しかねないシロモノである。ガンダムユニコーンがサンライズ公式として動いているのが本当なら、この作品によって宇宙世紀という世界設定の根本に関係する重層的設定が加えられたことは、覚えておいたほうがいいだろう。ユニコーン以前と以降では、宇宙世紀のすべての事象が、まったく違った意味を担うことになっていく。
『青の騎士ベルゼルガ物語』は、『装甲騎兵ボトムズ』からスピンオフしたオリジナル小説である。この作品を毛嫌いしていた友人はこう言った。「この小説を認めると、テレビでのキリコの物語が実は主流ではなかったということになってしまう」と。ベルゼルガ物語における異能者の位置づけの変化は、ボトムズ世界の設定を根底から書き換えてしまう。パラダイム・シフトを強要する。友人はそのことを嫌っていた。
しかしながら、宇宙世紀という世界は、パラダイム・シフトを繰り返すことで生き続けているという側面もある。
書けば官軍。
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