月刊ガンダムエース2007年3月号
【キャラクター】マリーダ・クルス
クシャトリヤとジェガン三機のMS戦から始まる本編1回目。クシャトリヤに乗るマリーダ・クルスが、戦闘を終えて艦に戻るまでのひとときの弛緩した状態での文章が印象的だ。
そうしていると体内に淀んだ不快が洗い流され、星の光ひとつひとつが聞いたことのない音を奏でて、ここではないどこかに連れていってくれるような気がする。そこには戦争もなく、不快もなく、人はノーマルスーツをつけずに、体ひとつで自由に宇宙を泳ぐことができるのだ。こういった感傷的なフレーズがさらりと出てくるから福井作品は油断ならない。18歳、腰まで届くストレートヘア、ニュータイプ(らしい)。
【キャラクター】バナージ・リンクス
本編の主人公は、少年から青年になりかけの平凡な男子である。『ずれている』という感覚は、ニュータイプ的な感性のようでもあり、特殊な生い立ちに起因するものでもあり、16歳という歳相応の精神構造によるものでもあり、それらがないまぜになった状態で、ようするに彼は自身をもてあましているのだろう。
その瞬間、『ずれている』世界がぴしりと引き締まり、それまで見えなかったなにかが目の前に開けたような感覚があったのだが、明文化する言葉は見つけられなかった。コロニーの外に出たリニアカーの窓から“白いモビルスーツ”を見た時、バナージは何を感じたのか。
このモビルスーツの開発を指示している人物がバナージと浅からぬ因縁があるかもしれないとはいえ、バナージとこのMSとのつながりはそれ以上のものはないはずである。“小説的なつかみ”ととらえて差し支えないだろう。
【キャラクター】謎の少女
ラミアは良い侍女だったが、なくなってすでに十年近く経つ。UC0086年ごろか。グリプス戦役直前……つまりアクシズが地球圏に戻ってくる前にラミアなる侍女は亡くなった計算になる。
【メカニック】クシャトリヤ
「シャアの反乱」から数年後の世界らしく、操縦桿は
アームレイカーが使われている。アームレイカーって何年ごろに採用されるようになって、何年ごろに廃れていったんだろうか。
【メカニック】ジェガン
ガランシェールに遭遇したクラップ級らしき連邦の戦艦からゲタに乗って出撃。
三機のうち、先行する一機は形式ナンバーの末尾にSが付く特務使用でRGM-89S、すなわちスタークジェガンである。
【メカニック】ユニコーン
RX-0という形式番号も既に提示されている。『UC計画』の要であり、この白いモビルスーツの完成を持ってUC計画は終わるという。
RX-0、《ユニコーン》。『UC計画』の所産は、軍もアナハイム社も感知しえない闇の領域で生まれ変わり、百年の呪いを解く鍵となって旅立ちの時を迎えようとしている。その外見は、こんな風に描写されている。
背部のメイン・スラスターの噴射口、直線と曲線を滑らかに繋ぎ合わせた全体のフォルム、額から突き出た一角のようなマルチブレードアンテナ(後略)かつて漫画家の長谷川裕一氏は、『機動戦士クロスボーンガンダム』の中で“眼が二つあってV字の角が生えていればガンダム”と、ガンダムの記号を端的に定義した。ゴーグルタイプの“眼”を持ち、一本角のユニコーンは、ガンダムの記号をことごとくはずしていることになる。ユニコーンはユニコーンのままか、それとも“ガンダム”であるのか。さて。
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