2008年06月20日

森永卓郎・柴田玲『痩せりゃいい、ってもんじゃない!』

森永氏とのひたすら往生際の悪い対談(苦笑)を交えつつ、「脂肪細胞は悪ではないよ、適度な状態に保つことが肝要なんだよ」ということを科学的に解説した本。対談の途中で柴田先生が「(森永氏は)特殊すぎて一般的な考え方が通用しないかもしれない」とあっさりサジを投げているところが笑えるところであり、本書の大きなトラップでもある。森永卓郎はメタボ代表としては特例過ぎて、「太っていて、仕事においまくられているおっさん」という部分以外は、あなたとは共通点がまったくない(断言)。

岡田斗司夫『いつまでもデブと思うなよ』が、いわゆるメタボ検診に先駆けた絶妙なタイミングで刊行されてベストセラー街道を驀進し、「ポストいつデブ」としていくつかの本が姿をあらわしている中で、意図的に「アンチいつデブ」っぽいタイトルネーミングでぶつけてきた本作。岡田斗司夫氏が『いつデブ』から間髪をいれずして『オタクはすでに死んでいる』を出すことによってまた違うステージに飛んでいってしまったことを受けて、「なんとなく残されちゃったオタク」としての森永卓郎の心情吐露が本書をただのメタボ関連本にしていないところであるが、本書の質を下げている部分である、と言えなくもないわけで。

「岡田斗司夫は痩せてオタク心を失ったのではないか」と森永氏は言う。オサレな服来て、事務所もすっきり片付いていて、ちっともオタクに見えないと。「自分もダイエットしたらオタク心を失ってしまうのではないか」と危惧しているのである。オタクはモノに埋もれて、服装なんて気にしないものだというパラダイムが彼を縛っているわけだ。

挙げ句の果てに柴田先生に「あなた、ダイエットする気ないでしょ」とまで言われてしまう始末。実際、氏は変わることをおそれているのだろう。ダイエットするというのは、「○○kg体重減」「ウェスト○○cm細く」といった物理的な変化がひとつの指標として捉えられてるが、実際はライフスタイルの変化であり、衣食住に対する価値観の変化である。体型の変化はその副産物としてあらわれる。ダイエットするということがそういうことであると、森永氏は見抜いているのだ。そういう意味で、柴田先生のアドバイス「毎日、菓子パン1個がまんするだけで毎月ウエストが1cm縮まりますよ」というのは事実であるが、本質ではない。それだけでは痩せない。

それにしても、森永氏の自己肯定っぷりだけは感服する。自分の過去、現在、未来についてこれっぽっちもコンプレックスがうかがえない。さっぱりしている。ここまではっきりしていると、かえって煙たく感じる人も多いだろうに、この自己肯定力は無敵だ。

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posted by 多村えーてる at 12:30| 奈良 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | BOOKS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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