2006年02月13日

ジェフリー・S・ヤング、ウィリアム・L・サイモン『スティーブ・ジョブズ 偶像復活』

少し長いけれど、Newton に関する記述を引用しよう。
(p407)
アップルの暫定CEOになったとき、スティーブが切り捨てた製品に、世界初の実用的PDA(携帯情報端末)、ニュートン(Newton)がある。リリース当時は完成度が低かったが、しだいに製品としての完成度が上がって収支もほぼとんとんになり、これからが楽しみな製品だった。はじめのころは使いにくかった手書き文字認識機能も、改良をかさね、他社にはまねができないほどの精度となっていた。ニュートンを担当したのはベルギー人のバイスプレジデント、ガストン・バスティアン。製品を誇りに思っていた。ニュートンは、ジョン・スカリーのもとで、独立した事業としてスピンオフした。それをスティーブがアップル社内にもどしたのだが、その後、考えを変えて、切り捨てる。ニュートンは、スティーブにとって、自分が創った製品ではないという大きな欠陥を持つ製品だった。それどころか、ジョン・スカリーが作った製品だ。キャンセルするのに十二分な理由だった。
これだけ、といえばこれだけだし、こうして取り上げられているってことだけでも興味深いことかもしれないし、なにより、著者はNewtonのことを正当に評価しているところがいいね。

傾いた企業が再生しようとするとき、不採算部門をクローズドするのは常套手段で、時にはそのことが企業のイメージにまで大きなダメージを与えることだってある。たとえばソニーは先日ロボット研究部門をクローズドして、アイボやキュリオといったソニーというブランドが持っていた未来感覚のようなものまで切り捨ててしまった。あまりにドライなリストラクチャリングだけど、そうでもしなければやっていけないからこその決断なのだろう。

アップルにおけるニュートン部門も果たしてそうだったかもしれない。しかし、本文でも指摘されているように、独立した事業としてスピンオフしたものを、ジョブズはわざわざアップル内部に取り込み直し、抹殺したのだ。ぼくにとってスティーブ・ジョブズは、Newton テクノロジーという二〇世紀最高の夢のおすそわけの息の根を止めた許されざる暴君である。

ところで、スピンオフしたのはギル・アメリオの時じゃなかったっけ?

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posted by 多村えーてる at 17:00| 奈良 | Comment(0) | TrackBack(0) | 嘆きのデジタル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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