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むかしむかし、バイクに手足が生えたようなデザインのロボットがレースをくりひろげるという、VHDでしかリリースされない作品があった…。「RIDE BACK」の作者があの作品を知っていたかどうかはわからないが、バイクのような疾走感とロボットの融合の歴史は思いのほか古いものであるということは記憶に留めておこう…。
学園紛争、オルグやらゲバ棒やら、きな臭い近未来世界が舞台である。学生特有のごっこ感覚と、若者ならではの純粋な真剣さと、そういうあいまいでゴリゴリしたものにじわじわと巻き込まれていく主人公。月刊誌の連載は、密度があるようで緩慢なようで、描くべき情報量やドラマの積み重ねが、微かではあるのだが、はしょられているような気がしてならない。もっとじっくりと描くことはできるハズなのだ。せっかく用意したさまざまなエレメントが、血肉を獲得する前に物語が消化されてしまうような。もったいない。
日常が少しずつ非日常と重なっていくような、この手のフォーマットはゆうきまさみが『機動警察パトレイバー』などで完璧なフォーマットを構築してしまった印象がある。どうしても比べてしまう。週刊連載フォーマットで、もっとまったりと状況が積み重ねられて、1巻のクライマックスが3巻目にようやくやってくるような、そんな引っ張り方をしたほうがこの作品は面白いんじゃないか。もっとも、やや軽めのキャラクター造型が作者の持ち味といえないこともないので、これはこれでいいのかもしれない。評価が揺れる。
この呪縛から逃れるには、もっとライドバックというメカニックの疾走感を強く押しだし、同時に大学という場所の存在の危うさを浮き彫りにするような、そんな明暗のはっきりした描き方をしたほうがよかったのかもしれない。
天才バレエダンサーが事故をきっかに引退、ライドバックに出会うことでアイデンティティを回復していく…という物語。これも、ある種の貴種流離譚と呼べるのだろうか。
ところでこのタッチ、どこかで見たなと調べてみたら、あー、『ヴァイスの空』の人でしたか。
カサハラテツロー/あさりよしとお『ヴァイスの空』全1巻 [Amazon] [bk1]
さらに本人のサイトを発見。
→カサハラテツローといっしょ
2004年06月01日
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