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はじめて読んだ小田扉作品が、本連作の1本目だったと気付いた。クイックジャパンはずいぶん前に購読を辞めてしまっていたから、本屋で立ち読みしたのだと思う。2本目の船長の話も読んだ覚えがある。しかし、これが江豆町という架空の街を舞台にした連作だとは少しも気が付かなかった。こうしてまとめて読むと、「小田扉ならではのおもしろさ」としか言い様のない醍醐味を感じる。一見とぼけた不条理漫画の登場人物たち。落ちているのか落ちていないのか分からない物語。の、はずが、そこかしこにちりばめられたパズルのピースがクライマックスに向けてからみあい、集結していく。
ポスト吉田戦車と評されることの多い小田扉だが、その根底にあるものは吉田戦車よりも屈折していて、なおかつ骨太な印象がある。箱庭的展開は吉田戦車の得意とするところだが、小田扉の場合は、同じ箱庭世界から初めても、最後には登場人物はみんな社会性を帯びていき、箱庭の色を塗り替えていく。読者の視点をどんどん高みにつり上げていくと言ってもいいだろう。吉田戦車の場合は、そうならないように、意識的にコントロールされているような気がする。小田扉の作品を最後まで読み終えた瞬間、最初の1ページ目を読んだときと同じ感情ではいられない。そういう組み立てができるという点で、小田扉にはただならぬ才能を感じてしまう。どれだけとっちらかった作品群でも、注目せずにはいられない。
ブログ内リンク:小田扉『男ロワイヤル』
2004年06月23日
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