神林長平『天国にそっくりな星』[Amazon] [bk1]
光文社文庫用に書き下ろされた当時の作品群は、出版社が違うからなのか何なのかわからないが、ハヤカワの神林作品とはあきらかに毛色が違っていて、けして上出来とは言えない、神林ファンとしても首を傾げたくなるような作品がほとんどだった。それも今となってはすべてハヤカワ文庫に収録されてしまい、おしなべて神林作品という括りになってしまった。新しいファンは清濁あわせのむの気持ちで全作品を読むことになるね。長らく再版されていない作品も、そろそろ再版してほしいところ。
で、そんな珍妙な光文社文庫の神林作品の中でも、『天国にそっくりな星』はわりと気に入っていた作品。いつもどおりの、神林ワールドが展開していく中で、ひときわ飄々としていた主人公は、ちょうど『帝王の殻』とかかったるい作品が続いていた中で、絶妙のカウンターだったのだ。
それにしても、神林長平をセカイ系なる珍奇なジャンルに分類するのはあまりにも不粋だねぇ。「迷惑一番」や「ルナティカン」でわざわざ深井零にからめたキャプションを入れたりしていたけど、そうまで姑息になる必要があるのか二十一世紀。
2004年02月09日
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