『ガンダム・オフィシャルズ』は、一年戦争から0083年頃までの出来事に限って編纂されたとはいえ、アムロとシャアの物語としては『Ζガンダム』『逆襲のシャア』にまで踏み込んだ部分もあった。しかし、二人が歴史の表舞台から姿を消したその後の宇宙世紀に関しての記述はほぼ皆無であったわけで、『F91』、その前後を構成する『F90』や『シルエットフォーミュラ』、そして『閃光のハサウェイ』を経て『Vガンダム』までの宇宙世紀が同じだけの密度で語られていく様子は、この小さな書物に驚くほどの密度感を与えている。その禁欲的とも言える独特の語り口で綴られる「その先」の宇宙世紀の様子に、なんともいえない満足感を覚えた。
低年齢向けを意識しているために、漢字・アルファベットには丁寧にルビがふられているが、その内容は本格的であり、本書を読みこなすには、それなりの年齢の者ではないと難しいのではないかとすら思える。ストイックなページデザインは教科書を彷彿とさせる。淡々と綴られていく宇宙世紀の歴史とあいまって、本当に歴史の教科書を読んでいるような気分にもなる。しかしそこに記されているのは宇宙史であり、モビルスーツを中心とした科学技術史でもある。単なる歴史の本でもなければ、技術解説書でもない。
そのストイックさ、ヘビーさ、それらもすべて合わせて、現在の「宇宙世紀」を俯瞰するテキストとしてはこれほど端的にまとめられたものはないだろう。
「現在進行形の宇宙世紀」である『ガンダムユニコーン』などは、残念ながら本書では取り上げられていない。ガンダムユニコーンは、なにしろ宇宙世紀開闢の瞬間から物語が始まっている。ガンダムユニコーンが完結する頃、宇宙世紀はこれまで以上に豊かな物語を獲得していることだろう。そのあとに姿を現すかもしれない新たなる『ガンダム・オフィシャルズ』に思いを馳せる。

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