2008年04月28日

映画クレヨンしんちゃん ちょー嵐を呼ぶ金矛の勇者

本郷みつる監督作品ということで、期待半分、覚悟半分。
いやはや、いろんな意味で本郷作品でしたよこれは。

しんちゃんの作画までがどことなく本郷監督時代の顔つきになってるのが印象的。少なくとも最近のテレビシリーズとは違う感じで(スタッフまでは研究してないから意図的なのかどうかはわからないけど)。

初期の本郷監督時代の映画って、いちばんしんちゃん人気の高かった時代なので観客動員数はすごいんだけど、いまみるとちょっちつらいんですよ。間が持たないというか。少なくともカウチポテトにはむいてない。本当監督ってダンドリとか組み立てとかさえ嫌ってるんじゃないかってくらい、その場その場のネタで突っ走っていくところがある。ドラマツルギーをどこまで薄味にしてもドラマツルギーたり得るか挑戦してるんじゃないかってくらい。その薄まりきったところでクライマックスにイテマエ!とばかりに突っ走るから、なんだか映画としておもしろかったような錯覚をおこさせる、それが本郷マジック。そんな作風だから、テレビ作品の最初の1クールのつらいことといったら(笑)。

『キンポコのゆうしゃ』も、そんな本郷メソッドがピタリあてはめられていて、とにかくもう、いまどうなっているのか、映画がどこにむかっているのかも分からないくらいの低空飛行。日常描写の積み重ねが、いつもの日常なのか、ちょっと狂ってるのかも分からなくなってきたときに、一転、決定的に狂った状況が描かれて、登場人物も観ている我々も「ええー!?」となって、物語が急加速。そこから二転三転する様子は、本郷監督の真骨頂……なんだろうな。そういった、ドラマとしての不安定さが何よりもこの作品の不気味さにつながっているのが本作の特徴。夜中に一人目が覚めたしんちゃんが、どこか不思議空間になっている夜の春日部市を徘徊する様は、クレイジーさと無邪気さと世界の不安定さと自由さと……とにかく怖いだろそれ。

(クレしん映画を理解するためのサブテキスト決定版)
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敵方がさんざんねばっておきながら、ヘンにあっさりとやられちゃういさぎよさも、「ほんとにあれでやっつけたことになるの?」という不安をあおってくる。下っ端はほんとにそれでやられるから、「ああ、この映画では“やっつけたよ”とマタ(本作のゲスト)が言ったらそういうことなんだな」と受け止めさせておいて、ボス戦ではそれをひっくりかえす展開をみせたり、とにかく観客に対してヒザかっくんしようとしているかのような演出の裏切り方がすごい。これって本郷監督は本能的にやってるんじゃないだろうかと思う。

どうもダークの言ってることやってることがいちいち本郷監督のホンネに思えて仕方なかったです。日本マナー法案により電車内で携帯電話使ってる奴は死刑とかw ダークがゆるぎない態度で侵略を進めていくのに、しんちゃんの気弱なことといったら(!) 本郷監督時代のクレしん映画での定番、「オラ、○○をおたすけするぞ!」。このセリフも出てくるんだけど、その言葉はどこか自信なさげ。セクシーな敵による姦計のままに、唯一の味方のマカを封印してしまったり、やることなすこと、いいかげん。モチベーションも何もない。追い詰められれば「オラ、野原しんのすけ5歳だぞ」。他に言う言葉がないのだから情けない。挙げ句の果てにダークには「お前なんか何の力もないただのガキだ」だの「5年も生きてきて何の役にも立っていないお前など不要な存在だ」だの、もうボロクソに言われるのだが何も言い返せない。監督が音をあげているのか、クレしん映画を自ら叩いているのか。

原監督にタッチした以降は、いろいろとブレはあるにせよ、「家族の絆がいちばん強い」を錦の御旗のごとく持ち出している。今回もクライマックスは野原一家の合体ワザ、野原マンXとなってダークを倒す!……と思いきや、ダークは健在、野原一家の団結力ではダークは倒せない。おまけに最後の最後までしんのすけ以外の野原一家はそのことを知らないで「野原一家の絆が敵をやっつけた」と思いこんだまま。このシニカルな展開といったら!

というわけで、本郷みつるらしいフィルムでした。よくもわるーくも。

間違いなく来年は監督交替だろうなぁ(苦笑)
でも、もうムトウユージ監督のアホアホ路線も飽きたしw
posted by 多村えーてる at 16:56| 奈良 | Comment(0) | TrackBack(1) | DIARY | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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Excerpt: ☆感動した。 ・・・知ってる気になって知らないものがある。 『クレヨンしんちゃん』は私にとって、そういうものだった。 『ドラえもん』ならば、私が子供の頃からテレビでやっていた。 だが、子供に人..
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Tracked: 2008-04-29 06:02