独身女性たちがことあるごとに集まっては、うまい料理を食べ、うまい酒を飲んでいる。いまどきの妙齢の女性の生活シーンって、こんな感じなんだろうなと思わせるシチュエーションだ。女同士の友情関係が、ひとりの男性の存在で微妙にすれ違ったりぎくしゃくしたりしていく様も、生々しい。主人公の受け身な性分が、いかにもカジシン好みなキャラクター。女性読者たちのシンパシー具合は、いかに。

梶尾真治『アイスマン。ゆれる』[Amazon]
柿沼秀樹「特別寄稿:『HOW TO BUILD GUNDAM』への道」より1/144ガンダムの金型を使ったペッパーショップの古賀学氏の装丁による表紙デザインもたいへん美しい。
当時私が考えたことは、いま若い造形作家たちが事もなげにやってのけている。模型のおもしろさや模型雑誌の意義は、ただ実物の縮尺コピーを目指すことや、実物との差異の指摘だけではなく、自分なりにイメージを描き、そのイメージに、どうアプローチすれば到達できるのか、どういう方法で完成させれば納得のいく結果が得られるのか、という姿勢やその方法を探求することにこそあるのだ。特にガンダムにおいては、どこにも実在しないその対象物を、どう夢想、イメージすべきなのか、その指針を読者やユーザーに提供するところから始めなくてはいけない。「モビルスーツは平気だから陸戦時には迷彩塗装されているはずだ」だけではもう古い。その工程が複雑すぎるためにアニメ本編には導入できないくらいの未来の戦術、戦法、機能が、模型としてのモビルスーツたちには備わっていて欲しい。
機体に書かれているべき文字や識別章は、友軍のリーダーでしか読み取れないようなマーキング方式を取っているかもしれないし、またくらい宇宙空間での編隊構成時には自らの機体を照らす照明だって必要かもしれない。侵攻中に機種の特定を阻むため、別の機種の装甲を纏って敵を欺瞞するという戦法だってあるかもしれない。
「HOW TO BUILD GUNDAM」を読み、『ガンプラ』を作って育ったモデラーたちもいまやすでに中年だろう。いまなら読者の低年齢化を危惧することなく新しい「HOW TO BUILD GUNDAM」を編集できるかもしれない。もちろん彼らを奮起させるような新しい挑発を込めて。
しかし何と言っても描いていていちばん楽しいのは、被弾して推力も失い宇宙空間を漂っていく戦艦である。被弾してただ爆発炎上するだけではどこにでもある戦闘シーンである。今まで描いたことがないのは? 爆発したり、炎上する時の火の広がり方は? 内部の構造を考えながらどうしたら格好よく壊れていくのかを考える。壊れ方にも美があるのだ。そのコダワリがぼくが絵を描く時の原動力となる。なんという贅沢だろう。この一文に出会えただけでも買った甲斐があろうというものだ。ちなみに、件の「爆発する宇宙戦艦」は、イラストのごくごく隅っこの小さな爆発に過ぎない。通常なら、気が付くはずもない脇役である。そこに、これだけの理屈と情熱が込められているのだ。
次は背景だ。映画でいう大道具。艦内の通路を進んでいる最中だろうか。いや、それだと通路を新たにデザインしなくてはならない。通路をデザインするためには艦内すべてのデザインポリシーを決めねばならないし、艦内の配置図まで必要になってくる。さすがにそれは面倒である。さすがにそれは面倒でしょう、と思わずこちらも突っ込みたくなる。背景ひとつ描くだけでも、宇宙戦艦(もちろんここではロジャーヤングだ)の艦内配置図まで設計しなければならないと考えることのできる、加藤直之氏が「SF画家」であることの所以ではないだろうか。
それならなぜ最初から写真を使わなかったのか。その答えは簡単だ。描いていて楽しくないからである。絵に写し取るだけなら写真を加工すれば事足りるが、それでは写真に撮れないものは絵に描けないことになる。常に訓練していなければだんだん能力は落ちていく。仕上げを大事にするイラストレーターである自分と、描く意欲を大切にする自分。「絵を描く意欲」が勝利することは、ぼくにとって珍しいことではない。ビジネスとしては落第スレスレな感じだ。しかしいったんはトレースしないで完成させている。「正確」な絵を一度見ておきたい欲求に負けた。さて、冒頭に書いた判型についても、あとがきでしっかり言及されていた。
最初は大きな判型も考えていましたが、すぐにやめました。大きくしたら薄くなるし棚にも入らないので、いつのまにかまぎれてしまいます。きちんと意図された仕上がりであることに、あらためて感心。
ぼくは、ぼく自身がもっとも読みたくなる本を作りました。
皆さん、この本はコミック本やSFマガジンと同じ棚に置いてください。そして時々と言わずいつでも手元に置いて目を通してください。
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